才女

 あるテレビ局に才媛(さいえん)ともいえる女性がいた。
 いつも天気解説用のフリップボードを作成してくれていた彼女は原稿を出さなくとも電話の会話だけで素晴らしい作品を作ってくれていた。
 普通は原稿通りにしか作成しないのが一般的であるが彼女は私が喋(しゃべ)りたい内容を察して見事なオリジナル画像に作り上げてくれるのであるから驚きである。
  私の最後のテレビ出演の際に近江朝廷の宴游会(えんゆうかい)で天智天皇が春山と秋山の美を競わせた春秋論争の話を題材にしたことがあった。
 この話はそれこそ才媛(さいえん)と呼ばれた額田王(ぬかたのおおきみ)が長歌の最後に自分は春よりも秋を称賛するという意味の言葉として最後に「・・・秋山われは」と結んだという実話である。
 そのフリップを最後の出演記念としてわざわざ額に入れてプレゼントしてくれた。
 その当時、彼女がこっそりつぶやいた言葉がある。
 今の若い世代は「スクラップを参考にした作品は出来てもオリジナル作品が作れない」と語っていた。
 この言葉の裏には感受性や発想が薄らいできたという社会現象を憂(うれ)いてのものではなかったかと思われる。
 彼女はその後、陶芸家に転身したがこれがまた素晴らしい。
 絵は描(か)ける、字は書ける、作品を捏ねられる、発想が豊かとなると鬼に金棒であり、正に才媛として今も活躍をされている。
 彼女から二度目の徳利(とっくり)セットが届いた作品は「二の字二の字の下駄のあと」であり、私の好きな熱燗(あつかん)と季節をかけての発想であった。