はぐれ鴨

  朝もやが立ち込めるような冬の朝、よく湖面や川尻などで群れなす鴨(かも)の集団を見かけることがある。
 
彼らは雪氷に見舞われ平均気温が氷点下数十度というシベリアの地からやってくる渡り鳥である。
 雪氷により食べ物が無くなるためであるがそれにしても数千キロを超えるような距離をよく迷わずに飛来してくるものだと感心する。
 今年も遠きシベリアの地からやって来たのかと思うと彼らが愛(いと)おしくなる。
 鴨は種類が多く見分けがつかないがツガイで仲睦(なかむつ)まじく泳ぐ姿などは実に微笑(ほほえ)ましい。
 ところが毎年見かける光景であるが河口や池の端などで一羽だけぽつんと群れから離れ独りぼっちの単独行動をしている鴨を見かけることがある。
 そんな光景を目にするとついつい足を止めて見入ってしまうことになる。
 人間社会のようにいじめにあったのか?、雌に嫌われたのか?などと邪推(じゃすい)をめぐらすことになる。
 冬という季節もあるが朝もやの河口や荒涼(こうりょう)とした湖面などで見かけるとより感傷的となり鴨の姿が心にひっかかって仕方がない。
 鴨は「カモにする」とか「カモが葱(ねぎ)を背負(しょ)ってくる」などとあまり良くないイメージの言葉として使われる。
 ところが一方では一度別れた男女が元に戻ると仲睦まじくなるという意味で「逢(あ)い戻りは鴨の味」という言葉がある。
 彼らは春になると再び故郷へ帰って行く。