お・も・て・な・し

 「おもてなし」とは日本人が美徳とする世界に誇る伝統の一つといえる。
 その語源は「裏も表も無し」、「モノを持って成し遂げる」という意味である。
 つまり、見返りを求めるような邪心(じゃしん)など全くなく心を込めてお客様を接待しますということである。
 実際に日本人は今も自分のことはさて置き相手に失礼が無いようにと心を配り、おもてなしの準備を優先させる。
 お客を迎えるにあたっては玄関先には打ち水をし、さりげないしぐさや慎(つつし)み深い立ち居振る舞いなどにも気を配った。
 歴史を辿(たど)ると「おもてなしの心」というのは茶道や華道の精神に通じ、日本の心ともいわれる詫(わ)び寂(さ)びの精神にも通じている。
 千利休は茶室にしても華美(かび)なものより質素な詫(わ)びたものの中から清らかな心を見出し、一服のお茶を通して精神性を求めた。
 利休七則を要約すると「相手を思いやり相手が心地よくなるように心を尽くす」ということになるが生け花であっても精神性は共通している。
 お月見を楽しむにしても来客の通り道にはさりげなく一輪の花を飾り、床の間であっても華美ではなく心が和(なご)むような花を選ぶ。
 こういった日本人ならではの精神文化が生まれたのも豊かな自然の中で共働共助と和をもって暮らしてきた環境が原点となっているように思われる。