暮らしの歳時記

 若い頃、新聞原稿の参考資料としてよく「暮らしの歳時記」を利用していた。
 単に歳時記といえば俳句の季語であるがその本には先人達が暮らしの中から見い出してきた生活の知恵や四季自然、行事、動植物、伝統文化など「森羅万象(しんらばんしょう)」ともいえる内容がぎっしりと詰まっている。
 その一つ一つには日本ならではの歴史と心が入っており、どんなに時代が変わろうとも日本人が忘れてはならない原点なるものが盛り込まれている。
 私自身の子供時代の体験や思い出を振り返っても季節ごとの原風景が鮮明に蘇(よみがえ)ってくる。
・(お正月)初詣、雑煮、お年玉、凧揚げ・・・。
・(春)雛祭り、お彼岸、お花見、わらび、春分、ウグイス、筍(たけのこ)・・・。
・(夏)端午の節句、新茶、七夕、お盆、七五三、花菖蒲(はなしょうぶ)、夏まつり、夕涼み、花火・・・。
・(秋)お彼岸、お月見、彼岸花、紅葉、すすき、百舌(もず)、コオロギ、秋まつり、菊祭り、松茸、サンマ、干し柿作り・・・。
・(冬)コマ回し、茶会、かるた取り、節分、雪合戦、千両・万両、寒ブリ、ふくら雀・・・。 

 他愛(たあい)のない過去の行事としか映らない若者も多いかもしれないが今にして思えば教科書からの知識よりも他愛のない実体験の方が大切なものを教えてくれたような気がする。
 春のさくら、夏の入道雲、秋の紅葉、冬の雪景色などは日本を代表する風景であるが日本のように微細に移ろい行く四季・自然を持つ国はない。
 いま、海外からは日本の自然美や異文化を求める観光客が増えているがそこには日本の自然と暮らしが混然一体となって作られたどこにもない日本文化が育ててきたからであるといえる。 

   「人は晩年になると自然を恋しがる」