季節を告げる花

 日本の草木花の数は世界でも最も多いとされるがその大半が春という季節に集中する。
 人にはそれぞれに心に残る花があるが私の場合は何といっても母親に手を引かれて小学校の門をくぐった時の桜の花である。
 当時の空の青さも二宮尊徳(金次郎)の銅像も映像として鮮明に残っている。
 ところが季節を謳歌(おうか)する花もよいが季節に先駆けて咲く花も忘れ難い。
 例えば早春であればやはり「オオイヌノフグリ」である。
 この花は実(み)の形が犬の陰嚢(いんのう)(キンタマ)に似ている所からとんでもない名前を授かっているがこれほど愛らしい花も珍しい。
 別名が“星の瞳”と呼ばれ青い瞳をちりばめたように咲く。
 この花を見ると田舎の畑にびっしりと咲いていた風景が思い出され「♪春よ来い、早く来い・・・」の童謡が蘇(よみがえ)ってくる。
 以下、私が大好きな季節に先駆ける花を紹介したい。
 初夏と言うには少し早い気もするが清々(すがすが)しい青空に蝶が舞うように咲く「花水木(はなみずき)」である。
 この花は日本からワシントンへ届けた桜の返礼として送られてきたが近年では日本の初夏を彩る銘木(めいぼく)として人気があり、すっかり知名度を得ている。
 それだけではなく秋になるとすらりとした枝ぶりに紅色(べにいろ)の葉に赤い実をつけ、品の良さでは桜もみじをはるかに凌(しの)ぐ。
 そして初秋をといえば夏の熱気がおさまり、安堵感を覚える季節であるがそんな中で突然ニョキニョキと田畑の畦(あぜ)を赤く染めるのが彼岸花(曼珠沙華(まんじゅしゃげ))である。
 昔からこの花ほど忌(い)み嫌(きら)われ毒花・死人(しびと)花・幽霊(ゆうれい)花などと悪名高き花はないが今ではこの真っ赤な花が咲かないと日本の秋がやってこないほどに増えている。
 近年では赤だけではなく黄色、ピンク、白などのものも見かけるようになってきた。
 最後に初冬であるがこの季節は華やかな花が姿を消し、時おり鈍色(にびいろ)(濃い灰色)の雲が顔を見せる中でひっそりと健気に咲くのが山茶花(さざんか)である。
 草花の数がめっきりと減った中での隠れるように咲く姿はいじらしい。
 その他、四季を代表する花を紹介しよう。
 (春):福寿草・木蓮、(夏):ポピー・クチナシ(秋):金木犀・コスモス・(冬):蠟梅(ろうばい)・ポインセチアなどとなる。