麦秋風景

 日本の初夏を彩っていた麦(ばくしゅう) 秋風景が消えて久しい。あの緑一色の中に広がっていたこんがりと色づいた麦畑は、今や心象風景となってしまった。
 麦の刈り入れは立春から数えて約半年、二毛作として田植えの前までに収穫ができるように作付されていた。
 麦秋とは「竹の秋」と同じ様に「麦の秋」とも呼ばれている。そして、この季節に吹く風もあえて「麦の秋風」と呼ぶ。
 本来、この時期であれば薫風とか緑風と呼ばれるのが一般的であるが、麦の穂を揺らしながら吹き渡ってくる風に、わざわざ「麦の秋風」と名付けたのが面白い。
 梅雨の期間中に覗く晴れ間もあえて「梅雨晴れ間」と名付けられているが、「麦の秋風」や「竹の秋」の方が色彩のコントラストや動きまでが目に浮かび、より季節感がある。
 とにかく、そんなところにまで目を向けてきた先人の感性が素晴らしい。
 麦は環境に強く、気温の低い地方から高い地方までの世界各地で作られるが、麦秋風景のイメージはそれぞれの国によって異なるのであろう。

前の記事

くす若葉

次の記事

ひなげしの花