初物

 「目には青葉 山ほととぎす 初鰹(はつがつお) 」(山口素堂)
 水野忠邦は天保の改革で大倹約令を発した。「贅沢(ぜいたく)は敵だ」の江戸版といえる。
 その一行に「初物禁止令」が入っていたという。当時の初物は高価で享楽的(きょうらくてき) であると一種の贅沢品(ぜいたくひん) として捉(とら) えた節がある。
 初物として有名なのは初鰹であるが、一心太助が生きていたなら、「ってやんでえー」「べらんめー」といったことであろう。
 「女房を質に入れても初ガツオ」といわれたように、初物を食べて縁起を担いだ江戸っ子(た) 気(か) 質(ぎ) の富裕層にとっては、さぞかし苦々しいお達しであったに違いない。
 初物とはその季節にとれる初めての野菜や果物、魚介類などを指し、初物四天王といえば「初鰹」・「初なす」・「初茸」・「初鮭」とされる。
 季節感が薄らいだ現代であるが、今も「初物を食べると七十五日の長生き」という言葉が残っている。この七十五日という数字は「人の噂も七十五日」や「モズの初鳴き七十五日」などにも出てくるが、これは春夏秋冬の日数に土用の日数を加えたものであり、五行説から捉えた一つの季節とか一つの単位という意味で使われてきた。
 四天王には入っていないが、この季節の初物といえば何といっても山菜であり、タケノコにワラビ・タラの芽などを思い浮かべる人が多い。

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