春の風

 「一月は雪、二月は氷、三月は風」という季節表現があるが、実にうまく捉(とら) えている。
 雪と氷に閉ざされた大地も、三月の声を聴く頃になると表情が和らぎ、張りつめていた空気も緩みはじめる。
 「春風駘蕩(しゅんぷうたいとう) 」とは長閑(のどか) な春景色の中に吹く風をいったものであるが、春の風は必ずしもそうではない。日差しが強まると空気の対流現象が起こりやすくなり、低気圧や前線の周辺では「春一番」や「花に嵐」といわれるような春の嵐を作り出す。
 コンピューターが普及していない頃は、アジア天気図の上に観測データをプロットしていく作業があった。この時に驚いたのは、大陸奥地では春から初夏にかけて、データが誤りではないかと思うほど気温が急上昇をすることがあった。
 イギリスに「春はライオンのようにやって来て子羊のように去る」という言葉があるが、その理由はこのことなのかと気づかされたものだ。
 日本でも西日本よりも北日本の方が一気に春がやってくる。
 春という季節はイメージとしては優しいが、実際には気性の激しい面を持ち合わせており、寒暖の差も大きい。春の光は雪氷を解かし、春の風を育てる!春の風は雨を促し、春の雨は青葉若葉育てる!
 自然の営みは計算づくではなく、自然の理に従って自然に自然を作るのである。

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