お花見

 いよいよ春がはじけ、身も心もほころぶ季節である。
 待ちわびた春の陽気に人々は躍動的となり、桜の見ごろは?週末の天気は?とお花   見の計画をたてる。この時期ほど天気予報が注目される季節もない。
 お花見は春を寿(ことほ) ぐ行事として歴史は古く、奈良時代にまで遡(さかのぼ) る。有名なのは豊臣秀吉が主催した醍醐(だいご) の花見であるが、お花見が庶民にまで広がるのは八代将軍徳川吉宗のころからとされる。吉宗が庶民の楽しみを目的として江戸市中に桜を植え、お花見を奨励したのがきっかけといわれている。
 当時の桜はまだ山桜や彼岸桜であったが、江戸末期になってソメイヨシノが登場する。そして、お花見が全国的に広まるのは明治に入ってからである。
 桜を愛(め) で桜の下で酒食の宴を催すという、日本人が至極(しごく)当たり前としてきた風習は、実は世界に例のない日本独特の文化である。
 桜の名所に出かけると、そこには老若男女(ろうにゃくなんにょ) で賑わう人生の季節模様を垣間(かいまみ) 見ることができる。これから春本番を迎えようとする子供達、今まさに人生の春を謳歌(おうか) している若者達、過ぎ去った春を懐かしむように微笑(ほほえ) むお年寄りまでが集う。
 無邪気にはしゃぐ子供達も、いずれ同じように孫達を見守る日がやってくる。
 「散る桜 残る桜も 散る桜」(良寛禅師)

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