黄砂

 中国大陸奥地では、これから初夏にかけて急激に気温が上昇する。凍(い) てついていた大地が暖まり、低気圧や前線などによって砂漠地帯の黄土が空高く巻き上げられると、黄塵(こうじん) となって日本の上空にも飛来する。いわゆる「黄砂」である。
 日本では昔から霞(かすみ) か雲かと呼ばれる程度であるが、中国や朝鮮半島のそれは日本の比ではなく、太陽が隠れてしまうほどである。満州と呼ばれた時代には家事で焚(た) くコーリャン(トウモロコシの根)の煙りと黄砂が重なって人も牛馬も目を患(わずら) うほどであったという。
 中国東北部では黄塵混じりの風を「蒙(もう) 古(かぜ) (こ) 風」と呼び、「つちふる」とも「バイ」とも呼ぶという。「春塵千里(しゅんじんせんり」とは大昔からあった気象現象の言葉であるとされているが、この地方では蒙古風が吹き、黄塵万丈 (こうじんばんじょう) の バイ天が過ぎないと春が来ないとされている。
 気象観測の中には「靄(もや) 」という項目はあっても「霞(かすみ) 」という項目はない。ところが昔から春のモヤモヤとしてかすんだ空を俳句の方では「春霞(はるがすみ)」と呼んでおり、この言葉は今も春の季語として存在する。
 日本では中国のような警報級の黄砂に見舞われることはないが、気象庁では平成十六年から黄砂予報を発表している。
 「地球儀を 回して拭(ぬぐ)う 春の塵」(宇佐見蘇骸(そがい))

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