甲子園の土

 ずいぶん昔の話になるが、一時期甲子園球場の天気が怪しい時や試合中に雨が降り出した時などはレーダー情報をはじめ短時間予想を提供していた。試合の中止や中断の判断材料とするためである。
 当時はまだパソコンが普及しておらず、固定電話とファックスでのやりとりであった。
 その後、全国の球児達が憧れを持つあの黒々ふかふかの甲子園の土に興味を持ち、阪神園芸の方に取材を試みたことがある。
 その結果、春は雨が多いために砂を多くして黒土40%に対し砂が60%、夏は日差しが強くボールが見にくくなるということで黒土を多くして、黒土55%に対し砂が45%にしているということであった。
 当時は中国福建省の白砂と国内産の黒土とのブレンドということであったが、それより前は主に瀬戸内の砂を使用していたという。
 その長い歴史と細やかな心遣いに対し、さすがは日本一の名球場と感服したものである。
 敗戦球児たちが万感を込めて掻(か)き集める甲子園の土は、彼らにとってはかけがえのない宝ものになるであろうが、高校野球ファンにとってもあの涙を誘う姿ほど感動するものはない。
 今ではすっかりお馴染みのシーンとなってしまったが、甲子園の土を最初に持ち帰ったのは元巨人軍の川上哲治さんではないかといわれている。

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