枕草子
枕草子は、今から千年以上も遡(さかのぼ) る平安時代の才女、清少納言が自然、生活、人生などを綴った随筆集である。
「春はあけぼの」
春は夜が白みかける頃の山際が紫がかった色合いに染まり、たなびく雲が
印象的である。
「夏は夜」
蛍が飛び交っていようが、闇夜であろうが昼間の熱気が治まるだけで夏の
夜は趣がある。雨の夜でさえ風情がある。
「秋は夕暮れ」
秋の帳(とばり) は早い。ねぐらに帰る鳥の姿に侘(わび) しさを感じ、虫の
音にもそこはかとした情趣を感じる。
「冬はつとめて」
霜が降りて蕭条(しょうじょう)とした景色も、深々と雪が降っている様子も
冬の朝などはピリッと引き締まるような風情が良い。
白くなった火桶の炭火にも趣がある。
彼女が四季を紡(つむ) いだ情景を、自分なりにイメージしてみたが、実に視点が繊細で鋭い。
千年を隔てた当時の人たちは何を楽しみにし、どんな生活をし、どんな生きざまであったのかと思いを馳(は) せる。
勝手な想像であるが、当時の人たちは厳しい生活環境の中であっても機械文明とは無縁であり、競争や精神的なストレスは意外に少なかったのではないかと思える。階層にもよるだろうが現代人に比べると我慢強さがあって、あるていど心にゆとりを持っていたのではないだろうか。
当時は四季の変化にも寒暖暑涼にも、今以上にメリハリがあり、自然の風景においても現代とは比較にならないほどの鮮明さがあったのではないかと思われる。貧しくてもそんな四季や自然に癒されながら、心穏やかに生きていたとするなら、羨ましい限りである。
ところが近年は天の川が見えないほどに空気が汚染され、季節の移ろいにも明瞭さがなくなってきた。
そこで現実に戻って気になるのが、今後のCOP(気候変動枠組条約)の行末と未来の地球である。千年後はどうなっているのであろうか。