春の訪れ

 まばゆい春の光に雨(あま) 垂(だ) れがリズムを早め、雪解けで膨らんだ川は瀬音(せおと)高く滔々(とうとう)と流れはじめる。遅々(ちち) としてもどかしかった雪国にもいよいよ待ちに待った「春」が「訪れ」る。
 この「春」という字と「訪れ」という文字の語源を紐(ひも) 解(と) くと実に興味深い。
 先ず春の方だが「春」は元々草冠(くさかんむり)に日と書き、芽を「張る=春」とか、「晴れる=春」という意味があった。そして「訪れ」の方のゴンベンには「音」とか「声」という意味があり、「方」にはやって来るという意味が含まれている。
 つまり「春の訪れ」という言葉には、空が明るくなって何処からともなく小鳥のさえず りや芽吹きのささやきが聞こえるような季節がやってきますよということになる。
 日本にはそれぞれの季節に、それぞれの声や音がある。ウグイスの声に春の長閑(のどか) さを感じ、囃(はや) したてる蝉しぐれに日本の夏を実感し、秋になると虫の声にやすらぎを覚える。そして、冬は悲しそうな虎落笛(もがりぶえ) に深々と降り積もる雪の気配に耳をそばだてることになる。
 いよいよ素晴らしきかな日本の四季がスタートする。

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