椿

 妙な花である。季語では春とされているが、場所によっては冬の花なのか春の花なのかよく分からない。気品や風情があるようでもあり、無いようでもある。寂しそうにも、はにかんでいるようにも、微笑(ほほえ) んでいるようにも見える。葉は分厚く厳(いか) ついが光沢と艶(つや) があり、その隙間から覗く蕾や花からは、こっそりと覗き見をされているような眼差(まなざ) しを感じる。
 椿は、豊臣秀吉が茶の湯の際に好んで用いたというところからか、茶室や床の間などでは一輪挿(いちりんざ)しにすることが多く「茶花の女王」という異名を持つ。
 そんな不思議な魅力を持つためか、全国には椿の愛好家が多い。
 ただ、寂(じゃく) とした中にポトリと花を落とす姿が斬首を連想させ、地面を赤く染めるのも縁起がよくないとされてきた。そのために見舞いの花としては禁忌(きんき) とされており、敷地内に植えない地方もある。
 私の中にも椿が落ちるあの瞬間が、妙な残像として残っている。

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