海況異変
地球温暖化のためなのか、近年は世界各地から異常気象が報告されるが、身近な海も様子がおかしい。
以前は瀬戸内では見かけなかったエイが大量繁殖をしているかと思うと、日本海には大量のクラゲが現れ、すくえるほどいた鰯の姿が消えて久しい。
和歌山勤務の時代にも季節はずれのカツオの豊漁が続いたかと思うと、例年揚(あ) がらないサワラが揚がり、脂(あぶら) の落ちた下りサンマがほとんど揚がらない年があった。
この年は遠州灘沖の高海水温域が影響しているのではないかといわれ、紀州名物のサン マ寿司やサンマの丸干しが地元でも口に入らないと囁(ささ) やかれたほどであった。
海況が生態系に与える影響ははっきりと解明されていないようだが、近年は海水温の上昇により珊瑚(さんご) の白化現象や魚の分布図が変わってきたという報告がなされている。
海水温と大気の間には鶏(にわとり) が先か卵が先かのような互いに影響を及ぼし合う相互関係がある。
気象の場合、この関係はエルニーニョやラニーニャ現象に代表され、気圧配置から台風の発生数にまで影響することが分かってきている。
そういった調査を担っていた気象庁の海洋気象観測船であるが、長年お世話になった神戸海洋気象台の「春風丸」をはじめ、函館の「高風丸」、舞鶴の「清風丸」、長崎の「長風丸」が時代の流れの中で姿を消してしまったことが寂しい。