時の流れと温暖化
小寒から立春までの約一ケ月を「寒」と呼び、一年の中で最も寒い時期にあたる。
よく昔は寒かったといわれるが、同じ寒冬といっても一冬だけの場合もあれば数年、数十年スパンで寒い場合がある。
「寒波」という言葉に明瞭(めいりょう)な定義はないが、従来は少なくとも五日前後に渡って氷点下40度以下の寒気が流れ込み、震え上がるような寒さが持続する場合に使用していた。
大正生まれの予報官からはよく「こんなのは寒波とは呼ばない」と言われたものだ。
ところが、平成に入って以降は本当に寒いといえる冬はなく、暖冬傾向が続いている。そのためかマスコミや若い解説者達は、一過性の冬型であっても「寒波に注意して下さい」などと報じる。
空を眺めて天気を占(うらな)う時代が終わり、天気図を読み取って人間が天気を予測する時代が去り、今はコンピューターが天気予報を出す時代となった。
長年天気図と睨(にら)めっこをし、天気図の読み書きなら誰にも負けないと自負してきた人間から見ると、気になることがいくつかある。
その一つは、大陸奥地でしばしば現れていた冬の1070ヘクトパスカルを超えるような高気圧が育たなくなったこと!(極周辺で寒気が溜まらなくなったことを示す)
二つめは、大陸高気圧の張り出しによる押しの冬型が消え、オホーツク海低気圧の発達による引きの冬型しか現れなくなったこと!(この低気圧は、オアフ島のサーファーが喜ぶノースショアと呼ばれる大波を作るほどに発達する)
三つめは、典型的な梅雨型・夏型・北冷西暑型の気圧配置が見られなくなってきたこと!(天気図の顔が変わり、昔の教科書が通用しなくなってきたといえる)
四つ目は、小笠原諸島方面からやってくる台風は怖いが、フィリピン近海で発生する台風は大したことはないといっていた説が、今はそうではなくなってきたこと!(フィリピン近海でもアッという間に920ヘクトパスカル前後まで発達するようになった)
五つ目には、真冬であっても大陸高気圧の一部が頻繁(ひんぱん)に移動性となって日本付近にやってくることである。(冬型の気圧配置が持続しなくなったことを意味する)
北極海の雪氷が消え、氷山が崩れ落ちる映像を見ると、長年の気象屋としても「温暖化」という三文字が不気味に思えてくる。