かあさんの歌

 ♪「かあさんが夜なべをして手袋編(あ)んでくれた木枯(こが)らし吹いちゃ冷たかろうてせっせと編んだだよ………いろりの匂いがした」
 窪田聡さん作詞・作曲の「かあさんの歌」である。
 これほど心が温(あたた)まり、これほど胸が熱くなる歌も珍しい。曲を聴くだけで貧しかったあの日あの頃の故郷を思い起こされる方も多いであろう。貧乏に追い打ちをかけるような過酷な冬を、家族で耐える日々の生業(なりわい)が、切々と綴(つづ)られている。
 この歌は冬の信州の情景を歌詞にしたといわれているが、当時の雪国は身も心も萎(な) えさせるような冬との闘いが年に一度の試練として巡ってきた。
 衣食住が十分でなく、水仕事の多かった当時のかあさん達はアカギレ・ヒビ・シモヤケなどは当たり前であり、苦労が絶えなかった。その頃のお母さん達もたまには現代のようにお化粧やおしゃれもしたかったであろうにと思う。
 人はわずかな喜びのために多くの努力をするが、雪に閉ざされ「♪根雪が解けりゃ…」と、ただひたすらに春を待つのみの日々は辛(つら)い。
 日本にも「冬」という一文字が重く人の心にのしかかる時代があった。

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