赤い実

 「歳寒(さいかん)の三友(さんゆう)」といえば寒い季節に友とすべき三つのもの、すなわち「松竹梅」である。一方、殺風景な冬ざれの中にハッと目を引くのは、何といっても赤い実をつける南天(なんてん)に千両、万両などである。白い綿帽子でも被(かぶ)ろうものならその実は一層鮮やかに映(は)え、強張(こわば)った心と身体を一瞬にしてほぐしてくれる。冬だからこその小さな出合いかもしれない。
 花の少ない季節というのもあるが、厳寒期の彼らは昔から縁起物(えんぎもの)として珍重(ちんちょう)されてきた。南天は「難を転ずる」としてお馴染 (なじみ)だが、千両や万両も福々(ふくぶく)しいその名の通り、冬場になると大きな存在感を示す。
 馴染(なじ)みは薄いが、他にも百両から十両・一両まであって皆それぞれに赤い実をつける。いずれも常緑低木であり、子孫繁栄を願う。中でもすらりとした女性的な容姿を持つ千両は見場(みば) がよく、お正月用の生け花として欠かせない。
 我家も毎年冬になると千両と万両の実が玄関先で出迎えてくれるが、なぜ葉の下に隠れるようにして実をつける万両の方が高価な名を拝命(はいめい)したのか不思議でならない。
 これらの実も冬の後ろ姿が見える頃には小鳥についばまれ、すっかり姿を消してしまうことになる。

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