ゆずり葉

 「年ごとに ゆづりゆづりて 譲(ゆず)り葉の ゆづりしあとに また新しく」(河井酔茗)
 「ゆずり葉」は「弓絃葉」「譲葉」「由豆流波」などの文字があてられている。
 別名が「親子草」、どこにでも見かける高木の常緑樹であり、どう見ても名前負けをしているなと思えるが名前の由来が素晴らしい。
 一般に、子が親を思う気持ちより親が子を思う気持ちの方が強いといわれるが、彼らは新しい若葉が出たことを見届けた後に、古い葉が命を譲るようにして落葉することからこの名がつけられた。親が子に思いを託しながら旅立つように先人達は、人の道と重ね合わせて眺めてきたのであろう。田舎のお坊さんの説法でも「親葉は枯れ落ちた後も朽(く)ちて肥やしとなり、幹を育て幼葉を育てる」と語っていた。
 「ゆずり葉」は親から子へ、子から孫へと家系が代々続くようにと願い、お正月には縁起物として重宝されてきた。その昔は、酒食を載せる器代わりや生け花としても用いられたという。日本のお正月は新たまの年を無事に迎えられたことに感謝し、無病息災・子孫繁栄・家内安全・五穀豊穣(ごこくほうじょう)を祈る。
 人はどんな生き方をしようとも、いつか人生の終い方を考える時がやってくる。

 

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