ゆず湯

 疲れて冷え切った身体を沈める冬のお風呂ほど、心身を癒してくれるものはない。
 現代はスイッチ一つでお湯が湧き湯殿は広くて明るい。シャワーもあれば入浴剤もあり、 ゆったりと脚まで伸ばせる。
 ところが五右衛門風呂(ごえもんぶろ)の時代は大変な苦労があった。水くみは男の子、風呂炊きは女の子、一番風呂は父親という不文律があり、湯加減の声かけや追い焚(だ) きは大抵が母親と相場が決まっていた。
 立ち昇る湯気は、明かり取りの裸電球を更に暗くしていたが、冬至の日に入った「ゆず湯」の香りと肌に触れてくる柚子( (ゆず) の感触は忘れ難い。ゆず湯の風習は病気に強い柚子の木にならって無病息災を願い、この冬を健(すこ) やかに乗り切ろうという願いを込めて江戸時代から始まったと伝えられている。
 日本人は古くから、言葉遊びやごろ合わせをもって願掛(がんか) けをしてきた歴史を持っているが、季節の分岐点である「冬至」と「湯治」をひっかけたり、柚子風呂(ゆずぶろ)に入ると風邪をひかず〝融通(ゆうずう)〟のきく人間になるというのも、その一例といえる。
 この風習は、太陽が戻ってくる季節の折り返し点である冬至の日に柚子風呂につかり、改めて向こう一年の健康祈願と自分に対しての戒(いまし) めを誓ったものと思われる。

 

 

前の記事

小春日和と冬日和

次の記事

ゆずり葉