出世魚

 成長するにつれて名前が変わる魚のことを「出世魚」と呼ぶ。古来日本には、子供から大人への成長過程においては元服の儀をはじめとする数々の人生儀礼があった。この習わしが魚にも波及したといわれ、その代表的なものにスズキ、ブリ、ボラなどがある。
 身内の結婚祝いで、スズキの幼名であるセイゴを頂いたことがあるが、そんな席に用いる出世魚は必ずしも真鯛のように大きくて立派なものがよいとは限らない。スズキは夏から秋にかけてが旬の魚であるが、冬場になると何といってもブリが珍重される。
地方によって呼び名は異なるが、関西の場合スズキはセイゴ→ハネ→スズキと変わり、ブリの場合はツバス→ハマチ→メジロ→ブリとなる。
 ブリは冬になると産卵のために日本近海の沿岸を北から南へと南下し、お正月のおせち料理には欠かせない。有名なのは富山湾であるが、この地方では初冬の雷鳴轟(らいめいとどろ)く海荒れの後はブリが豊漁になるということから、この雷を「ブリ起こし」と呼んでいる。
 ブリの語源は、脂(アブラ)がのった魚とか、炙(アブ)って食すというところからの転化ともいわれている。
 寒ブリといえば何といっても照焼きにブリ大根であり、お正月料理には欠かせない庶民の味となっている。寒が立ち込めるような夜は、熱燗にブリ大根が似合う。

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