きたけ

 岡山県の北部では、晩秋から冬場にかけて降る時雨(しぐれ)や雪時雨(ゆきしぐれ)のことを「きたけ」と呼ぶ。時雨の語源は「過(す) ぐる」「しばし暗し」、「きたけ」、「風(シ)を伴う雨」と諸説あるようだが、は日本海側のそれとは若干異なる。
 日本海側に見る時雨といえば、本降りの雨と変わらず雨量も多くなるが、この方面では山脈越えの時雨雲(しぐれぐも)が原因であるために雨でも雪でも止み間が多く、時には晴れ間も覗く。
 いわゆる山陰に雨や雪を降らせた残骸の雲が、時おり飛んでくる雨や雪のことを、北からの気配という意味で表現したのではないかと思われる。
 年寄達は「あの時は〝きたけ〟のする寒い日じゃったのう」などと語る。語源のほどはよく分からないが、漢字にするとやはり「北気」と書いたのではないだろうか。
 全国にはこの地方と同じような地形や天気現象を持つ所は多いが、これほど冬の天気現象を的確にとらえ、味わいのある言葉も珍しい。その土地に生まれ、長い歴史を持った言葉であると思われるが、近年では若者たちの口からそんな方言を聞くことはなくなってしまった。

 

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