万年青

 お正月の生け花として重宝される花材には、縁起ものとされる千両、松、水仙などがあるが、私の場合は毎年「万年青(おもと)」と決めている。
 何度挑戦してもなかなかビシッと腰の座った生け込みはできないが、流麗なその姿には 気品と風格があり、これほどお正月の床を飾るにふさわしいものはない。派手さこそないが、年末に生け込んでもその名の通りいつまでも青々と長持ちし、この季節であれば悠(ゆう) に一ケ月は凛(りん) とした姿を保つ。
 立葉(たちは)、露受(つゆう) け葉、流れ葉などに包まれる赤い実は子孫繁栄と和合を表現し、意味深な謂(い)われもあると聞く。
 日本原産である万年青は、母人(おもと) が子を抱いているところから名づけられたという説があるが、確かにその姿には安らぎを覚える。
 万年青は常緑の植物であり、田舎に行くと何処の庭先でも人知れず哀れな姿を見せていることが多い。ところがである。手入れと生け方によっては、床の間に玉(ぎょくせき) 石の如く見事に蘇 (よみがえ) る。
 万年青は引っ越しや長寿の祝いとして用いられるというが、全国各地にはこの不思議な魅力を持つ万年青に魅了された人たちの「万年青同好会」がある。

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