紅葉

 人は色とりどりに染まる紅(もみじ) 葉を求めて、景勝地へと出向く。
 全山を一望する「三段染め」もよいが、青空や茜空(あかねぞら)を仰(あお) ぎ見る「透(す) かし紅葉(もみじ) 」や、湖面に映る「逆(さか) さ紅葉(もみじ) 」も味わい深い。
 三段染めとは山の頂上付近の新雪の白さ、中腹の紅葉(こうよう)に黄葉(おうよう)、山裾(やますそ)に広がるまだ青い葉のコントラストの美しさをいう。
 遠出をしなくても、身近な里山や公園で楚々(そそ) として色づいた紅葉(もみじ) にも声をかけたくなる。
 様々な借景(しゃっけい)の中で、色とりどりに染まるのが日本の紅葉の魅力であるが、なぜか心惹(ひ) かれるのは落ちて間もない葉っぱ達である。そんな彼らには「私どうしたの!」、「なぜ!」と問いかけてくるような艶(なま) めかしさが残っている。
 寺院や庭園などではそうした紅葉はむしろ風情があるとされ、掃き清めてすぐの落ち葉は敢(あ) えてそのままにして置くという。
 そして更に季節が進み、晩秋から初冬にかけて庭一面を埋め尽くす落ち葉は「散紅葉(ちりもみじ) 」と呼ばれ、それはそれで別の味わいがある。
 紅葉の季節は「秋燃ゆる」と表現するが、見方によっては「命燃ゆ」であり、舞台でいえば最後の花道である。彼らは木枯らしの号数が増える度に地に舞い、冷たい雨に打たれ、やがて土に帰る。
 人の一生も同じであるが、早春から見せてくれた自然の営(いとな) みが間もなく終わりを告げる。

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