夕焼け小焼け

 ♪夕焼け小焼けの赤とんぼ…三木露風  
 ♪夕焼け小焼けで日が暮れて…中村雨紅
 二作とも歌詞も曲も切なく、すぐに郷愁がこみ上げてくるような作品であるが、以前から気になっていたのは「小焼け」とは一体何なのかということである。
 片や兵庫県の龍野、片や東京の八王子、洋上や大草原に見る壮大な夕焼けとは明らかに異なる。
 二人は共に明治の詩人であるが、当時は龍野であれ八王子であれ、素朴な日本の秋を染める感傷的な夕焼けであったに違いない。そこで両者の実家に取材を試みたことがある。
 龍野からは「山や雲に遮(さえぎ) られ陰影を含んだ小さな夕焼けも考えられる」という言葉もあったが、両者とも明解な答えは返ってこなかった。
 一方「小焼け」とは、「仲よし小よし」の「小よし」と同じように口調をよくするための言葉であり、夕焼けとは対になったものではないかという意見もある。確かに山口県の海辺育ちで童謡詩人であった金子みすゞさんの詩にも、「朝焼け小焼けだ大漁だ」と、ここにも小焼けが付せられている。
 本当のところはさて置くとして、日本の秋の夕景は海辺であろうが山間(やまあい)であろうが、ことのほか心に沁(し) み込んでくるものがある。

 

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