菊花展

 各地で菊花展が開かれているが、「菊作りは罪作り」といわれるほど手間がかかる。
 一度だけ見よう見真似(みまね)で菊作りに挑戦したことがある。それなりの花は咲いてくれたものの無精者(ぶしょうもの) に務まるはずはなく、わずか一年で頓挫(とんざ) してしまった。
 手塩(てしお) にかけるとは、牛や馬に塩を手にとって舐(な) めさせるほど可愛がって育てるという意味であるが、菊作りも手間暇(てまひま)をかけ心血を注いで育てる必要がある。土作りに始まり、鉢の植え替えから水やり、消毒、摘芯(てきしん)…とやることは枚挙(まいきょ)にいとまがない。
 菊花展に並ぶ「大菊」、「厚物(あつもの) 」、「管物(くだもの) 」、「福助(ふくすけ)」と絢爛(けんらん)豪華な作品は正に昼夜日々、丹精(たんせい)をこめて作った愛の結晶である。中でも「懸崖(けんがい)作り」や「菊人形」の見事さには素人目にもその苦労が偲(しの) ばれる。
 親心としては、このままずっと咲き続けてほしいと願うが「歳月(さいげつ)人を待たず」である。この言葉は「年月は人の都合など待つことなく過ぎ去り、人はすぐに老いてしまいますよ、だから時間を無駄にしないように万事に励(はげ) みなさい」という戒(いまし) めを含んでいる。生あるものの世の常である。
 季節の方は「菊日和」から「小春日和」へ、そして「冬日和」へと移り、菊の名前も「枯菊」、「残菊」、「寒菊」などに変わってゆく。
 中国では重陽(ちょうよう)の節句(せっく) (陰暦九月九日)には菊酒を飲み、長寿の祈願をするという。
  「枯菊を 剪らずに日毎 あはれなり」(虚子)

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