日本の秋を代表する芒(すすき) が真っ盛り。川の土手や山裾に群生し、秋の斜光に煌(きらめ) き揺れる穂波は幻想的で人を魅了(みりょう)する。
 秋の七草の一つに数えられる芒は、花穂も色合いも地味であるが、秋を描いたり、秋を生けるにはなくてはならない存在である。華やかさがないために主役より脇役が似合い、いぶし銀的存在ともいえるが、舞台によってはなくてはならない主役にも躍り出る。
 しかし、陽が落ちる頃になるとその容姿は不思議で怪(あや) しい雰囲気を醸(かも) し出す。芒は「芒の穂にも怖(お) じる」とか「幽霊(ゆうれい)の正体見たり枯れ尾花」といわれるように、何かが潜んでいるような不気味さを漂わす。
 穂先の姿が動物のしっぽに似ていることから、別名「尾花」として知られているが、見方によっては妖艶(ようえん)なそぶりも持ち合わせる。そのためか別名は乱れ草・露見草・袖振り草など艶(つや) っぽい異名(いみょう)をいただいている。
 芒がカヤと呼ばれ、屋根葺(ふ) きや簾(すだれ) の材料となる頃にはすっかり秋も長(た) け、季節は荒涼(こうりょう)とした冬へと移る。
  「山は暮れ 野は黄昏(たそがれ) の 芒哉(すすきかな)」(蕪村)

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