もず

 秋陽真っ只中、「キーキー、キチキチキチ…」。長閑(のどか)な秋日和の静寂をけたたましく破るのが「百舌(もず) 」の奇声である。
 彼らの高鳴きが耳につきだすと、アーやっと秋になったかという感じがする。
 百舌は読んで字の如く二枚舌(にまいじた)どころか百の舌を持つと言われ、メジロやウグイスなど他の鳥の鳴き声を真似(まね)るといわれる。
 高所から人を見下すような仕草は、昔の悪童にも似た憎めなさがあるが、蛙やトカゲ・昆虫などを木の枝に串刺しにする「百舌の速贅(はやにえ)」には彼らの獰猛(どうもう)さが窺(うかが) える。
 昔はこの速贅(磔(はりつけ))の位置によって、その冬の積雪を占(うらな)った地方もあった。
 「百舌の高鳴き七十五日」とは、百舌が高鳴きをはじめて七十五日ほど経つと初霜が降り、やがて初雪がやってきますよという意味である。
 前にも紹介したこの七十五日という数字は季節の単位として扱われるが、関西においてはこの諺(ことわざ) は実際にほぼ合っているといえる。他に「人の噂も七十五日」とか「初物を食べると七十五日の長生き」などといわれるが、こちらの方はいささか眉唾(まゆつば)ものの感じがする。

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