木犀

 早春の空気を和らげるように匂い立つのは「沈丁花」、初夏の雨上がりにむせぶように香るのが「クチナシの花」、秋天の何処からともなく漂いくるのは「木犀(もくせい) 」、冬日和の中でゆかしく鼻孔(びこう)をくすぐってくるのが「蝋梅(ろうばい)」である。
 いずれ劣らぬ蠱惑的(こわくてき)な芳香を放つ彼等は四季を代表する香りの四天王ともいえる。好みの違いはあっても、その中で最も開放的で淡く心地よい香りを放ってくるのが、秋の木犀である。残暑から解放されて心が軽くなった季節の香りというのがまたよい。
 花によって異なるのかもしれないが、一般に花の香りは湿度が高いほどよく薫り、日中よりも朝晩、晴天よりも曇天、冬より夏の方がよく匂うと聞いたことがある。
 木犀には金木犀(橙色)と銀木犀(白色)があるが、香りが強く人目にもつきやすいのは金木犀の方である。
季節の移ろいなど何処吹く風といった現代人も、秋陽の中に漂いくる木犀の香りにはふと足を止める。
 秋の到来を告げるのは彼岸花、秋本番を告げるのが金木犀、秋の終焉(しゅうえん) を告げるのは菊の花である。

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