風いろいろ

 日本語ほど語彙(ごい) の多さを持つ国は無いが、中でも四季を通して吹く風の呼び名ほど多いものはない。
 東風(こち)、春一番、南風(はえ)、春はやて、疾風、薫風、緑風(りょくふう)、青嵐(せいらん)、乾風(あなじ)、熱風、旋風、涼風、爽風、寒風、野分(のわき)、貝寄風(かいよせ)、颪(おろし) 、木枯らし…など地方名まで加えると切りがない。
 春は「風光る」、夏は「風死す」、秋は「風立つ」、冬は「風荒ぶ」などと表現し、「風趣」、「風雅」、「風景」、「風流」などといった言葉まである。
 姿のないものに対してこれほど多くの呼び名や言葉を持つものも珍しい。いずれの風も目にすることはできないが、普段は私達の五感を刺激し、季節の情趣(じょうしゅ)を運んでくる。
 ところがそんな風も、時によっては大洪水を引き起こす豪雨の元となり、台風ともなると広島・長崎に落とされた原爆の何千倍とも何万個分などといわれるほどの莫大なエネルギーを生む。
 風は地球の自転、気圧傾度、熱交換等が主な原因であるが、とにかく喜怒哀楽が激しく、絶えず表情を変えながら地球を駆け巡っているのである。
 「流線図」ともいうが、膨大な天気図を描いてきた経験からすると、目に見えない風の流れや悪天域も、いつのまにか理屈なしに分かってくるようになる。

前の記事

赤とんぼ

次の記事

囲碁の効用