人と自然

 日本の四季は、それぞれがそれぞれに豊かな表情を見せてくれ、移ろい行く自然の営みほど心が安らぎ癒(いや)されるものはない。
 日々の生業(なりわい)に忙殺(ぼうさつ)され、とかく季節の機微(きび) に疎(うと) くなった現代人も、一度病(ひとたびやまい) に臥(ふ)すと途端に気弱となり、心の中に秋風が吹きはじめる。いつも見慣れた景色や自然が妙に身近に感じるようにもなる。
 ふと気がつくと、風の音や自然の匂いまでもが身体の中に忍び込んでくる。自然の営みが病んだ心に底知れない勇気を与えてくれる。元気で動けるのがあたり前と思っていたことが、そうではなかったことにも気づかされる。
 「大病をすると人間が一回り大きくなる」とか「人の痛みの分かる人間になれ」というのも、本当の意味で弱者の気持ちを知りなさいということなのであろう。
 「暗黙知(あんもくち)」とは、人間が暗黙のうちに知識として持っていても、言語に表せないとか説明出来ないものという意味らしいが、人と自然の間にはそんな不思議な因果関係があるように思えてならない。
 医学的にもみても自然を意識して眺めたり、風や空気を感じ取る心を持つと血流がよくなり自律神経の乱れも解消されるといわれている。
 「海の日」や「山の日」もよいが、日本の場合は「四季の日」とか「自然感謝デー」という日を設けてもよいような気がする。

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