「ぼたもち」と「おはぎ」
子供のころに「餅(もち) はぼたもちで」と教わった。
「餅」はもち米だけで作るが、「ぼたもち」はもち米とうるち米を混ぜて作るために、餅の方が格が上であり、何かを頂いたら些少(さしょう)であっても気持ちを返しなさいという意味で使っていた。
子供心には「餅」よりも「ぼたもち」の方が甘くて美味しいのになと思ったものである。
後になってであるが「ぼたもち」の別名として「おはぎ」があることを知った。ところが、その違いはと尋ねるとなかなかはっきりしない。
「ぼたもち」を漢字で書くと「牡丹(ぼたん)餅」、「おはぎ」は「お萩(はぎ) 」となる。呼び名の違いには地域や季節、形、素材(こしあんとつぶあん)など諸説あるようだが、漢字からみると、誰が見ても季節(春は牡丹、秋は萩)に関係があると思う。
基本的には同じものであっても、春のお彼岸に食べるのが「牡丹(ぼたもち) 餅」であり、秋のお彼岸に食べるのが「お萩(はぎ) 」という説が分かりやすい。
お彼岸とは「春分の日」と「秋分の日」を中日(なかび) とした前後七日間であり、この間に先祖供養として「牡丹餅」や「お萩」を供(そな) えた。
地方によってはもち米を半搗(はんづ) きにしたものを「半殺し」、全部搗(つ) いたものを「皆殺し」とか「本殺し」と呼んだ。昔、ある旅人が宿の厠(かわや) に立った時「今夜は半殺しにしようか」、「皆殺しにしようか」という会話を聞き、震(ふる) え上がって逃げだしたという笑い話がある。