秋の訪れ

 優しくなった雨が上がり、しっとりとした夜のしじまが広がろうとしている!
 秋気(しゅうき)に払(はら)われた雲間から「宵の明星(みょうじょう)」がきらめき、湯上りの身体が清々しい!
 いつまでも続く残暑に辟易(へきえき)としているところへ、何の前触れもなくやってくる初秋の風ほど心地よいものはない。秋がくれる最初の贈りものである。
 秋口になってやってくる初めての涼気(りょうき) のことを、新たに涼しと書いて「新涼(しんりょう)」と呼ぶ。
 そんな夜などは「あー、やっと秋になったなー」としみじみ思い、最良の季節到来に安堵(あんど) 感を覚える。
 同じような意味で「今朝の秋」という言葉がある。こちらの方はまだまだ日中は残暑が続いているが朝晩の熱気やほてりは収まり、長かった夏の終焉(しゅうえん)を感じさせる言葉である。
 日本の秋の訪れはもどかしく待ちどおしいが、高緯度地方の秋は冬の前触(まえぶ)れであり、人々の心を日々暗くしてゆく。
 日本には「秋惜(お) しむ」という言葉があるが、高緯度地方においては秋ではなく「夏惜しむ」ということになる。

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