季節の室礼

 近年はすっかり影をひそめてしまったが、日本には古来四季を通しての伝統行事があった。この季節であれば何といってもお月見である。
 心地よくなった秋の夜風の中で、家族のみであったり、親しい客人を招いたりして祝い事の一つとしてお月見を楽しんだ。
 「室礼(しつらい)」とは、こういった慶事(けいじ) や人生の節目の行事に飾りつけを行うことをいったものである。
 仲秋の名月(十五夜)であれば三方(さんぼう)に月見団子やお酒・里芋などを盛り、秋の七草である芒(すすき) や萩(はぎ) などを飾って名月を愛(め)でる準備をした。後(のち)の月といわれる十三夜になると、里芋に変わって豆や栗が供えられた。いわゆるこれが十五夜の「芋名月」であり、十三夜の「豆名月」もしくは「栗名月」と呼ばれた所以(ゆえん)である。
 お月見をしながら酒宴や歌会・句会を催すという風流さは、日本ならではの文化であるが、そこには祖先や収穫への感謝の気持ちが込められている。
 室礼には季節を代表する野菜・生り物・草花などを添えて格式や演出効果を高めるという狙いと、もう一つは今でいうお客に対する「もてなしの心」が存在した。
 我が家の場合は家族だけのお粗末なお月見であったが、振り返ってみるとかけがえのない財産を残してもらったと思っている。

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