時候文

 日本の四季を細分すると「初春・初秋」、「仲春・仲秋」、「晩春・晩秋」というように季節の頭に「初」・「仲」・「晩」の字をあてて呼ぶ。
 ところが、人が暑さや寒さに耐えなければならない夏の盛りや冬の最中(さなか)に限っては、仲夏とか仲冬とは呼ばず、盛夏とか厳冬などと呼ぶことが多い。
 時候の挨拶も季節のよい時期は「 ○○の候、……お喜び申しあげます」というように、季節を讃(たた) える文言となるのに対し、厳夏厳冬期だけは「○○の……ご自愛下さい」などと見舞い文になる。
 八月といえば耐え難い夏の盛りであるが、暦の上では二十四節気の「立秋」があり、この日を境に時候文は暑中見舞いではなく残暑見舞いへと変わる。そこには今暫く暑さに気を付けて下さいという心遣(こころづか)いと、新たにやってくる爽快な季節に対しての期待感が込められている。
 日本の場合、春と秋に関しては過ぎ去る季節に対して「惜(お) しむ」という言葉を用いるが、夏と冬に関してはそれに類する言葉はない。時候文や季節用語の使い分けからみても、先人の季節への強いこだわりが見て取れる。
 暑中見舞いや寒中見舞いは、とかく杓子定規(しゃくしじょうぎ) になりがちであるが、ほんの一言の添(そ)え書きを加えれば念が届くことになる。

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