いつか来た道

 産業革命以来、機械文明は目をみはる進歩を遂げてきたが、人間はいつまで経っても進歩をしないという見方がある。
 長い歴史を振り返っても、弱肉強食と争いの絶えた試しはない。人には欲望があり、寿命がある。いくら歴史に学び、学習をしても、悟りらしきものを悟った頃には死が待っている。「今の若い者は」という言葉も太古の昔から繰り返されてきたという。
 昭和20年8月6日午前8時15分、テニアン島を発したエノラゲイ号から核爆弾リトルボーイが広島に投下された。この日の広島の天気は晴れ、原爆投下直前の午前8時現在の気温は26.7度、北の風0.8メートル、最低気温23.4度、最高気温は31.5度であった。
 穏やかな夏空に巨大なキノコ雲が湧き上がった瞬間、史上空前の大惨劇が起こった。普段は海陸風が起こるのは午前10時頃であるが、この日は投下直後に海風に変わり、黒い雨が降ったと記録されている。
 戦争は、人が人として生きられないという惨状を歴史が証明してきたが、今も世界の現状は見ての通りである。
 古代ローマの歴史家クルティウス・ルフスの言葉「歴史は繰り返す」と、唱歌「この道はいつか来た道…」は戦争をひき起こした国としての反省からか、いつの間にか戦争と平和を結びつけて語られる言葉となった。

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