日本に生まれて

 人間は、気が遠くなるような命の継承から見ると、同世代を生きることそのものが奇遇稀(きぐうまれ)とされている。そんな中で、世界の中の、日本の、ある地域の、学校や職場等での出会いとなると、奇遇稀というより天文学的な数字となる。
 そういう目で見ると「一期一会(いちごいちえ)」という言葉はおろそかに出来ない。
 人はどこに住もうと小さな世界であり、住めば都であり、ふる里でもあるが、生活環境は国によって大きく異なる。暑いばかりの国があれば、寒いばかりの国もあり、地肌ばかりが目立つ国もある。
 繰り返しになるがその点、日本のように緑が溢(あふ) れ「春夏秋冬」が鮮明で、海洋生物や草木花の数が世界一といわれる国はない。何処に行っても清流が流れ、生水が飲める国も珍しい。
 『果てしなく美しい日本』、『日本人の美意識』などの本を執筆し、日本文化研究の第一人者とされるニューヨーク生まれのドナルド・キーンさんは、日本の素晴らしさに魅了(みりょう)され、とうとう日本国籍まで取得してしまった。
 彼は、昔の宣教師達も、日本人の美意識、感受性、品格、作法、秩序、清潔感などからみても日本の国民性と文化に強く魅(み) せられたことは疑いないという。世界でもこれほど優(すぐ) れた国があるとは思えないとも語る。さらに、日本は世界に共通点のない独自文化をもっており、この文化を世界に広めるためには努力を惜しまないとまで言い切る。
 言葉こそ柔らかいが「日本人は古き良き伝統文化を学ぼうとしないところがある!古いものをもっと大切にしなければならない!」という苦言も呈している。
 学ぼうとしないどころか一時期は欧米文化にあこがれて「古い」とか「ダサイ」などといって切り捨ててきた面がある。
 夏休みのお天気教室や親子囲碁教室で、「皆さんは日本に生まれてよかったね」という話をすることがある。いかに日本が素晴らしい国であるかという話に、子供達は真剣な眼差(まなざ) しとなり、改めて日本に生まれ育ったことに感謝しなければならないことに気付く。
 世界には学ぶことも食べることもままならず、その日その日を必死で生きる子供たちがいる。

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