ナスビの花

 梅雨の雨が上がる前後から一斉に咲き出すナスビの花が、真夏の到来を告げる。
 ナスビの花は、よくよく見ると愛くるしくて気品がある。色合いが高貴な色とされる紫ということもあるだろう。
 何度か伐(き) り取って生け花にしてやろうかと思ったことがあるが、実践したことはない。
 「親の意見とナスビの花は千にひとつの徒(あだ) はなし」とか、「徒花(あだばな)を咲かすな」などと教わってきたからかもしれない。
 徒花とは無駄花とも呼ばれ、実を結ばないで散る花とか、実のあることを伴わない事に対して使われた言葉であり、誠実に生きよという意味で教わった。
 その点ナスビは、花をつけると間違いなく実を結ぶとされることから「徒花」はないとされてきた。そんなナスビの花を切り落とすにはもったいなさと忍びなさが重なり、なかなかハサミは入れにくい。
 子供の頃に何気なく聞いていた言葉が、大人になって重くのしかかってくることがある が、「 親父(おやじ) の意見と冷酒は後になって効いてくる」というのもその一つであろう。
 ナスビの花を見ると「それ見ろ、言わんこっちゃない!」と、父親ならぬ母の声が蘇(よみがえ) る。

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