日本の夏

 こんな都々逸(どどいつ)がある。
 「好きなお方と夏吹く風はそっと入れたい蚊帳(かや) の中」
 風流さの中に人情と季節の機微(きび) を粋(いき) にからませている。
 ただただ蒸し暑いだけの夏の夜!冷房などなく、悶々(もんもん)とした寝苦しさの中で迷い込んだ蚊の羽音にイライラをつのらせた経験を持つ人も多いであろう。
 昔の人は逃げ場のない日本の夏を「せめて」という言葉に置きかえ、五感を通して涼しさを求めた。「打ち水」の効いた前栽(せんざい)に客を招き、濡(ぬ) れ縁の風鈴に涼味(りょうみ)を感じてもらうという感覚は、日本人ならではの“もてなしの心”である。「水琴屈(すいきんくつ)」や「ししおどし」なども涼しさを演出するが、「打ち水」の場合は実際に気温が2度前後下がる。
 日本の夏を涼しく過ごすために生まれたのは和風建築に着物であるが、日本の夏は他にも夏祭り、浴衣(ゆかた)、扇子(せんす) 、団扇(うちわ)、下駄(げた) 、蚊帳(かや) 、怪談(かいだん)など数多くの独自文化を育んできた。

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