くちなしの花

 五月闇(さつきやみ) ともいわれる雨の季節に、ひときわ目をひくのは白く清楚な「くちなし」の花である。
 煙るような雨上がりの中に、ジャスミンやカサブランカのような濃厚な香りを放ち、夜目遠目(よめとおめ)にもすぐそれと分かる。白無垢(しろむく)の花嫁を思わすような花の白さ、雫(しずく) を溜める葉の艶(つや) やかさ、「旅路の果てまでついてくる」と唄われた香りは梅雨の花として人を魅了する。
 そのためか花言葉は「喜びを運ぶ花」、「私は幸せです」とされる。
 ところが、あの真っ白な花もあっという間に黄ばみを増していくためなのか、なまめかしい香りのためなのか、何かと女性と重ね見る向きもあるようだ。
 この花は「梔子(くちなし)」とも書くが「口無し」という文字もあてられている。後者の方は秋になって果実が熟しても口を開かぬというところから、この名が付けられたとされている。
 そのため碁盤の足はこの果実の形に模(も) して作られており、「打ちては無言、周りの人も口出し無用」という意味が込められている。また、碁盤の裏の窪(くぼ) みは歪(ひずみ) やひび割れの防止と石音の響きをよくするためとされているが、別名「血だまり」とも呼ばれている。対局中に口を挟(はさ) むと首を刎(は) ねられても仕方がないという謂(いわ) れがあるそうだ。

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