明石蛸

明石の名物といえば蛸。この季節の蛸はあえて「麦わら蛸」と呼ばれる。麦が収穫される頃の蛸は格別美味しいとされるからであるが、実際にはこれから立秋の頃までが旬となる。
 蛸は刺身に天ぷら、煮つけに酢の物とどんな料理にも合うが、本当の蛸の旨さが分かる人は意外に少ない。
 蛸は別名「デビルフィッシュ」とも「海の忍者」ともよばれ、旧約聖書では食べることを禁じられていた。
 ところが、所変われば品変わるである。江戸の浮世草子、井原西鶴の一節には「とかく女の好むもの芝居・浄瑠璃・芋・蛸・ナンキン」とされており、日本では女性の好きな食べ物の中になぜか蛸が入っている。
 蛸は大変な大食漢であり「ひと潮」で大きさが倍になり、梅雨の雨で成長するといわれてきた。ひと潮とは新月から満月、満月から新月までの半月毎の潮回りのことである。
 知人の蛸漁師さんの話では、蛸は食べた分だけ太るといわれるほどの大食漢であることに違いないが、その話は梅雨の悪天でちょっと漁に出られない間に、いつのまにか大きくなっていたというのが本当のところであろうと語っていた。
 関西では夏至から数えて11日目にあたる、「半夏生」の日に蛸を食べる習慣がある。植えた稲が蛸足の如く、しっかりと根づくようにと願った風習である。
 梅雨が明けると、愛嬌のある干し蛸が夏の風物として浜に揺らぐ。

 

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