人は巡りくる季節にそれぞれの思いを馳() せる。
 誰しもが悩み多き人生においてどれだけ自然の移ろいに癒(いや) され、どれだけ勇気をもらったことであろうか。
 自然が自然に自然を作るように、私たちもあるがままに自然体で生きていけたら、どんなに楽しいかと思う。
 四季折々の草花達は互いに引き立て合い、分相応(ぶんそうおう)にそれぞれの命をまっとうする。
 しかし、人の世は同じ空の下で宗教だ、民族だ、格差だと言っていがみ合い、争いを続けている。
 現代に至っては、誰にもコントロールが出来なくなってしまった「経済」という大きな魔物までが棲() みつき、人の欲望を駆り立てる。この「経済」という魔物は地球の温暖化だけではなく、人の心も自然も文化までをも蝕(むしば) み始めており、現代人は自然に目を向けるゆとりすら失ってきている。それにひきかえ自然は、海も山も空も、移ろいながら見事な調和を見せてくれる。
 日本の気候風土は喜怒哀楽(きどあいらく)こそ激しいものの、柔らかくて深みがあり、巡りくる四季は世界の中で最もはっきりしている。その恵まれた自然環境が、世界に誇る情緒豊かな国民性と、世界に類を見ない独自文化を育んできた。
 人が生きる上において悩み、苦しむほど悲しいことはない。
 人として生まれて最も大切なものは何なのか、人としての原点とは何なのか?
 自然の移ろいを眺めていると、そんな疑問に答えてくれるような気がする。
 この本では日本人が忘れかけている日本の心・歴史・文化などを、四季を通して綴ってみた。心が悩んだり迷ったりした時、そっと覗いていただければ幸いである。

                     (最後の天気職人)